日本の漫画は、他に類を見ない多彩なアートスタイルや深いストーリーテリングで世界中の読者を魅了しています。
しかし、その魅力を多言語の読者に伝えるためには、熟練した「翻訳者」の存在が不可欠。
翻訳は文字だけでなく、文化や表現のニュアンスを忠実に伝えることを求められます。
さまざまなチャレンジに立ち向かいながら、どのようにして日本の漫画を新たな読者層に届けているのでしょうか。
株式会社MediBang 「MediBang TraDe」チームの星野さんにお話しを伺いました。
「MediBang TraDe」とは
こんにちは、株式会社MediBangの翻訳チームのリーダーを務める星野です。
えかきーのライターのニクスキーです。今日は宜しくお願いします!
宜しくお願いします!と言っても毎日オフィスで会ってますね。笑
そうですね。笑 今日はえかきーのライターとして宜しくお願いします!笑
※ニクスキーの本業は株式会社MediBangの社員であり、えかきーのライター業は副業である。
ー 簡単なプロフィールを教えてください。
私は日系オーストラリア人で、生まれと育ちはオーストラリアですが両親とも日本人という環境で育ちました。
幼少期から漫画/アニメ/日本のテレビ番組などを見て育ち、日本に住みたいというのが夢でしたが、23歳の時に実現することができました!
その行動力と夢の実現力がすばらしすぎる。
ちなみに現在の日本での生活はいかがですか?
今は自分の漫画好きとバイリンガルなスキルを仕事に活かせていることをとても嬉しく思っています。
翻訳の力を通じて、グローバルなコミュニケーションを促進し、異なる文化を結びつけるお手伝いができることを誇りに思っています。
自分の好きな事や能力を最大限に活かせるのって素敵ですね。
ちなみに月並みですが、趣味、好きな食べ物、あと好きな漫画も教えてください!
趣味はボルダリングで好きな食べ物はお寿司。
好きな漫画は「ろくでなしブルース」!
ろくでなしブルース!めちゃめちゃ懐かしい…!そして渋すぎる。
ー 「MediBang TraDe」とはどんなサービスか
まず「TraDe」の由来ですが、「Tra」は「Translation(翻訳)」、「De」は「Delivery(配達)」を表しています。
ほうほう、そんな意味があるんですね。
そうなんです。
この名が表す通り、MediBang TraDeは言語翻訳を行う「翻訳チーム」と、翻訳を配達する役割の「配信チーム」の2つの部門で成り立っています。
なるほど、翻訳からコンテンツの配信までを一気通貫で行なっているサービスという事なんですね。
その通りです!
その他にもネイティブの視点という強みを生かして、海外で受け入れられやすい作品の選定/共同制作、配信先の選出など、配信に関わるコンサルティングとプロモーションも行なっております。
サービスの詳細はこちら
「翻訳」の仕事とは
ー 翻訳分野について
「翻訳」と言っても色々な分野があると思います。
MediBang TraDeでは主にどの分野の翻訳を行っているのですか?
そうですね、代表的な翻訳分野はエンタメコンテンツになります。
なるほど、エンタメのどんなコンテンツですかね?
メインとなるのは漫画翻訳です。
アクション、コメディーから学生もの、歴史物やサスペンス、あとBLの翻訳も対応してます。
BLまでとは…!予想以上に幅が広い!
最近ではWebtoonの翻訳も請け負っています。
こちらは韓国や中国を舞台としたロマンス/ファンタジー物のご依頼が多いです。
最近よく見かける縦読み漫画ですね。
めっちゃ読み易いので個人的にもっと盛り上がってほしい漫画形態だったりします。
あと漫画以外の分野ですと、ゲーム翻訳も対応しています。
エンタメコンテンツといえばゲームですね!
ちなみにどんな系統の作品の翻訳を対応されてますか?
ゲームでは主に、文字数の多いビジュアルノベル系の作品を手がけています!
ノベル系ゲームの膨大な文字数と予想される翻訳コストに震えます。
あとはアニメの字幕翻訳/作成やライトノベルの翻訳も行なっています!
配信の一環としてプロモーション資料の翻訳をやることもあります。
本当に色々なエンタメコンテンツに対応していますね。驚きです!
ー 翻訳可能な言語について
翻訳言語は何言語対応可能なんでしょうか?
やはり英語が多いんですかね?
そうですね、翻訳の60%は日→英翻訳が占めています。
それ以外にも
- 中国語(簡/繁)
- 韓国語
- スペイン語
- タイ語
- ドイツ語
- フランス語
など10言語以上の翻訳が可能です。
10言語以上…!多言語翻訳希望のクライアントさんは一括依頼できて便利ですね。
これらに限らず、お客様のニーズに合わせて言語のカスタム対応も可能ですのでお気軽に相談いただきたいです。
ー 翻訳業界と「漫画の翻訳」について
「漫画の翻訳」ができる企業がまだまだ少ないと聞いた事があるんですが本当ですか?
そうなんです。漫画の翻訳は業界的にとてもニッチなので…。
そうなんですね、日本と言えば漫画文化!だと思っているので驚きです。
現在、漫画翻訳を行なっている会社は10社ほど存在しています。
ですが、コンテンツの配信まで対応しているのはおそらくMediBangだけです!
ー なぜエンタメコンテンツ翻訳は少ないのか
なぜエンタメコンテンツの翻訳は少ないんでしょう?
エンタメ系のコンテンツ翻訳は難しい専門用語が少ない分簡単そうに見えますよね。
ですがまったくもって全然そんな事ないんです…!
私も心の端っこで簡単なのでは?と思ってました…すいません。
何が難しいのでしょうか。
エンタメコンテンツの中でも特に漫画の翻訳の難しさが顕著です。
漫画はセリフに「感情」が入っているので、直訳だとすごくつまらない仕上がりになります。
セリフ自体にキャラクター性を出す必要があって、これがすごく難しい!
ああああなるほど!確かに…!!!
あと日本語には
- ヤンキー口調
- お嬢様口調
のようなキャラクター特有の口調もありますよね?
あ…!(察し)
英語では言葉の語尾は存在しないので、これらの部分も言い回しなど、口調以外の部分でキャラクターの個性を表す必要があるんです。
確かにただ直訳するだけじゃ表現できないですね。これは難しい…!
そして何より難しいのが「効果音」です。
キャラクターが行動する時に出る効果音「オノマトペ」ってやつですね。
そうです。ちなみに日本語では「バン!」「パタパタ」などのオノマトペを多様しますが、海外ではほぼ使いません。
なるほど、その国に存在しない表現の翻訳をしてるんですね…。
その通りです。
このように弊社では、案件を通して翻訳が困難な漫画翻訳に関する知識を長年培ってきました。
この知識を用いる事で、キャラクターの感情表現や場面に合うオノマトペの翻訳を行なうことが可能なのです。
今までの実績について
ー 今までの実績について
今までの実績について、可能な範囲で教えてほしいです!
そうですね、現在は某少年漫画の出版社様の作品や、異世界系のマンガ/Webtoonを80作品以上翻訳しています。
80作品…!膨大ですね。
中にはサイマル配信と言って、日本の配信日時と海外の配信が同時にされる作品も担当しています。
この配信方式は日本と海外の読者さんが同時に作品を楽しめるので、スケジュールの調整が大変な反面とてもやりがいがあります。
今までの実績についてはこちら
ー クライアントについて
ちなみに「企業」だけではなくて「個人」からの依頼も請け負ってるんですか?
もちろん請け負ってます!
個人のゲームデベロッパーさんやマンガ家さんからも依頼を受けています。
個人からでも大丈夫なんですね!
ちなみにどんな作品に携わったんですか?
そうですね、東北を応援する「ずんちゃん」の4コマ漫画の翻訳と配信を行いました!
個人であっても大事な作品をお預かりする事に変わりはないので、打ち合わせを通してクライアントさんの求める翻訳に仕上げるよう丁寧にご対応いたします!
ちなみにここだけの話、「こんな翻訳もできます!」というジャンルはありますか?
エンタメ系の翻訳であれば全般的に得意ですが、例えば学習マンガなど専門的な作品の翻訳も可能ですのでぜひご依頼ください!
MediBang TraDeの翻訳のこだわり
ー 「特にこだわっているポイント」について
翻訳で特にこだわっているポイントがあると聞いたのですがどの部分ですか?
ネイティブ翻訳が強みなので、翻訳版を読んだ場合でも原作を読んだ場合と同じ感覚で楽しめる翻訳にする事という点にこだわっています。
それはすごい!確かにこれ明らかにニュアンス違うよね…?みたいな翻訳でガッカリした事があります…
あとは翻訳する国特有の文化も考慮して翻訳しています。
翻訳チームは漫画/ゲームオタクで構成されているので、ネイティブかつ漫画/ゲーム情報に精通した翻訳を実現することができます!
ちなみに「他社には絶対負けない!」という最強の強みを一つ挙げるとしたらどこですか?
最強の強みは時代や流行に合わせて「常に進化している」という事ですね。
言語は絶えず変化しているため常に最新情報を把握し、翻訳に反映させています。
また、翻訳だけに限らず翻訳に関わる支援ツールや自動翻訳との連携など、翻訳環境に関しても新たな技術を積極的に取り入れる事を意識しています。
最後に
最後に今回のインタビューの読者へ伝えたい事があればどうぞ!
宣伝になってしまうのですがこの度、翻訳や翻訳業界についてのウェビナーを開催する事になりました!
実例を交えた翻訳工程の解説や、翻訳から配信の流れを詳細に解説する予定です。
漫画翻訳に興味がある方や翻訳の裏側を知りたい人はぜひご参加ください!
イラストや漫画制作の現場の事はよく耳にするけど、「漫画翻訳」の現場はとても新鮮なのでは…!